北京雑感―41

「打包」と量り売り

先日、日本の飲食店で供される調理食品のうち20%が廃棄されていると言うことをテレビのニュースで知りました。この廃棄量を減らすために、ある市では飲食店に盛り付け量の少ないメニューの解発を依頼し、市民には残した食べ物を持ち帰るためのドギーバッグを無料で提供し始めたそうです。このドギーバッグ、アメリカではよく使いましたし、中国でも、2000年頃は始まったばかりのようでしたが、2,3年のうちにすっかり定着したようで、私もしばしば利用しました。

食事が終わってから「打包(ダーバオ)」と言うと、服務員はサッと発泡スチロール製で蓋と身が一体の容器を持ってきて詰めてくれます。何種類も残っている時は、どれが必要か聞かれます。勿論、全部持ち帰って良いのですが、気を付けていないと2,3種類一緒に詰められてしまいます。乾いたものならそれでいいのですが、とろみのついたトマト味のものも、塩味の炒め物と一緒に積めようとするので、慌てて停めて、別々にして欲しいと頼むことが度々ありました。

一度、近くのレストランで、スープがとても美味しかったのに沢山残ってしまって、お店の人にどうにかならないかと相談しました。家の近くで、かなり頻繁に行く店なので、器を借りて帰りたいと思ったのですが、服務員は「没問題(メイウェンティ―問題ない)」と言って、何とビニール袋にざぁーと移して持たせてくれました。スープでたぽたぽするビニール袋をぶら下げて、複雑な思いで家路を辿りました。
また別の時、北京で有名な骨付き羊肉の水煮鍋のお店に行ったのですが、ここはスープ(煮汁)の持帰りに対応して、直径15センチ程のプラスチック製バケツを貸してくれました。ただしその保証金(押金―ヤージン)が5元でした。貸してくれるバケツは、外で買えば1元もしないようなもので、5元は随分高いのですが、返しに行けば全額払い戻してくれるので、バケツの使用量は只なのです。然しながら、徒歩圏内ならいざ知らず、5元のために態々車やバスで出かけるのは面倒なので返しには行かず、結局5元のバケツを買うことになってしまうのです。帰り道では、皆、この保証金額設定の妙に感心しきりでした。


中国では、昔から宴会の料理が残らないと主人の顔がつぶれると言ったそうですが、今でもその名残はあるようで、公式の宴会などでは料理がいっぱい残って、とてももったいないと思うことが間々有りました。格式の高い食事でなくても、老北京飯館(固有名詞ではありません)と言って北京の庶民料理を供するお店で食事をすると、食べ残しが多いのにびっくりします。老北京飯館は、昔ながらの北京の庶民料理を供するお店で、店員さんは全員男性、民国時代のような帽子と服を着て、客が来ると大きな声で迎え、店員さん同士も大きな声を掛け合いながらテーブルの間を駆け回り、うるさいくらい賑やかです。この種のお店は賑やかなのに加えて、テーブルが小さく、椅子も木を渡しただけの二人用ベンチですから落着かないのですが、そこに身を置くと、何故か心が浮き立ちます。清朝末期か民国時代を覗いているような面白さも感じます・

このお店で人々は、料理を小さなテーブルにお皿が重なるほど注文して、最後に名物の炸醤麺(ジャージアンメン―肉味噌麺)を注文します。その前に沢山料理を頂いているので、炸醤麺が来る頃にはお腹が一杯で、麺は美味しいのですが食べられないで残してしまいます。勿体ないと思いながら回りのテーブルを見ると殆どのテーブルで残りものが一杯でした。この種のお店の残飯は特に多いと感じていました。ところが、こんなお店でも「打包」する人が段々増えて来ました。残飯を減らすためには良い取組みだと思います。


ところで話は日本のドギーバッグに戻りますが、以前、一時期日本でも食べ残しの持帰りが出来たと思います。それが、何回か食中毒のような事故があって、お店のほうが用心深くなり、最後には法律で禁止されたように記憶していますがどうでしょうか?


北京では、日本のようにこの「打包」が途中で立ち消えにならないように祈ります。因みに、北京では、家庭で料理した食べ物が日本と比べて長持ちするような気がします。北京が乾燥しているからかな?と勝手に想像しています。


もう一つ北京で変わって欲しくないものは、量り売りの習慣です。これも、以前の日本にはありましたが、今ではデパートの食品売り場で僅かに残り、気の利いたスーパーが最近再開しましたが、一般には殆ど見られなくなりました。北京では、パック売りが増えてきたとは言え、まだまだ量り売りが主流です。量り売りで品物を買うと、何故か豊かな気分になります。北京の物価が上がるのは仕方が無いとしても、折角人手があるのですから量り売りは残して欲しいと思いますが、中国の社会情勢が変化すると、今までのような販売形態は難しくなり、日本のように量り売り文化が無くなってしまうのでしょうか?日本を反面教師として、なくならないように頑張って欲しいと思います

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