北京雑感―40

変わって欲しい北京―U

 

 バス停に続いて、変わって欲しい北京の第二も、やはり交通に関することです。

 少し前に、中国の自動車販売台数が世界一になったとの新聞記事を眼にしましたが、ここ何年かの北京における自動車交通量の増加を見てきた人間としては、「今頃やっと世界一なの?」と言う気がします。

 20世紀が終わろうとする頃初めて北京を訪れた時、大学の所有する車を手配していただいて市内観光をしたことがありますが、年季の入った車で自転車の洪水の中を、遠慮がちに走っている印象でした。当時は、自家用車が非常に少なく、バス・トラック以外は殆どが公用車でしたから、街中の商店街で車を停めて降り立つと、それだけで人々の注目を浴びて気恥ずかしい思いをしたものでした。

 それが年を追うごとに自家用車が増え、自転車が少なくなった道を我がもの顔で走るようになって来ました。ご存知のように北京の中心街は、長安街の片側6車線を別にしても、大部分が片側3車線以上あり、非常にゆったりしています。追い越しも儘ならないようなような狭い道を走り慣れた身には、こんな広い道を走れたら渋滞も無く快適だろうと羨ましく思ったものですが、自家用車が増え出した5,6年前頃から、こんな道でもしばしば渋滞が起こるようになりました。

 オリンピックが近づいて、地下鉄や道路の拡幅など工事の影響で一時期渋滞が発生することが多くなりましたが、時期を同じくして車の台数が急激に増えたので、工事とは無関係の道路にも渋滞が頻発しました。片側3車線もある直線的な道路でどうして渋滞が起こるのか不思議でしたが、ある時、バスの一番前に座って1時間以上渋滞の中を走って、その原因を私なりに理解することが出来ました。

 原因は、一言で言うと、運転者のマナーの悪さだと思います。運転者に譲り合いの気持がありません。バスが内側の車線を走っていて、バス停が近づいたので外の車線に出ようとするのですが、外側を併行して走っていた車はバスに道を譲りません。前のバス停には先のバスが停まっていて、そのままは行けないのに譲りません。バスの前で内側車線に入る積りなのですが、バスもそうはさせません。お互いに譲らないで、バスはバス停で外側の車線に停まって乗客の乗り降りをさせます。バスの2列駐車です。そこで3車線のうちの2車線がつぶれてしまいます。一番内側を走っていた車はバスを追い越してスイスイ行くので、バスの後ろについた車がその車線に入ろうと強引に鼻を突っ込みます。内側の車も譲りませんから、事故寸前の状態で止まったりして、バスの後でも渋滞が起きます。

 そんな時、バスの上から車を見ると、車線に斜めに突き刺さるようになって動きが取れなくなっているのです。3車線の道路に車が4台も5台もひしめいていることがあるのには驚かされます。

 初めのうち、バスの外側を走る車がバス停の前でバスに車線を譲らないのが悪いと思ったのですが、見ていると、事はそう簡単でないことが分かりました。若し、その車がバスに道を譲ったとすると、バスの後を走っていた車がどんどん先に行って、譲った車が入ることを許しません。又、バスが外側車線の車に道を譲ると、その車の後ろについた車がどんどん入ってきて、なかなか外側車線に行けないのです。日本では暗黙の了解になっている「合流は一台ずつ」などというのは夢物語です。又、バスが外側車線の車を先に行かせようとすると、後続の車が次から次へと入って来て、外側車線へはなかなか行けないので譲れません。北京のドライバーは、公共車輌だからと言って遠慮はしないようです。

 以前、西四の交差点で信号待ちをしている時、信号は緑になりましたが先がつかえていて動いていないのに、後続車がどんどん交差点に入って来ました。そのうちに信号は赤になりましたが、交差点内の車は動けず、横切るほうの信号が緑になっても一台も渡れませんでした。日本だったら、先がつかえていれば信号が緑でも交差点内に入らずに待ちますが、北京では行かないと、隣車線の車が進んで前を埋めてしまいますから、自分も行かなければならないのです。これも渋滞の原因の一つと納得しました。

 日本も、何十年か前には随分運転マナーの悪い時期がありましたが、時間の経過とともにマナーも向上しました。それを考えれば、一般市民が車に乗るようになってまだ4,5年しか経っていない北京の人々の運転マナーが悪いのは仕方がないことかも知れません。中国には自己主張の強い人々が多いので、運転マナーの徹底には少し時間がかかるでしょうが、案外、オリンピック以降現在も行われている、曜日ごとにナンバープレート末尾数を指定しての運転制限のように、公安の介入が有効でしょう。結果としてマナーが向上すれば、この運転制限は必要無くなるのですから、一石二鳥だと思います。

運転マナーさえ向上すれば、あの広くて走り易そうな道路なら、車が今より増加しても、現在のような渋滞は無くなるはずです。大いに期待しましょう・

 

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