北京雑感―35

北京の小鳥

 

 最近の新聞で、一時数か減ったと見られていた都会のカラスが、再び増えて来たとのニュースを見ました。確かに、都会とも言えない我が家の近くでも、よく見かけるようになりました。別の機会に、“ハトに餌をやらないでください”作戦で、ハトが大分減ったと言うニュースを聞きました。人間がちょっと係ることで、そんなに影響があるのかと驚いた覚えがありますが、カラスの復活は、何故なのでしょうね。人間のゴミの管理が甘くなったからだとは思いたくないのですが、どうでしょうか?

 北京で、私はあまりカラスを見かけませんでした。ゴミの出し方は、あまりお行儀良くありませんでしたが、カラスが群がると言う光景には出くわしませんでした。でも、知人の中には、「カラスはかなりいる」と言う方も居られるので、一概に少ないとは言えないかも知れません。

 北京の小鳥で、いつも思い出すのは、私が初めて北京を訪れる前、友人が冗談で、「北京には小鳥がいない。皆食べられてしまうから。」と言ったことがあります。確かにその旅行中、カラスやスズメ、公園のハトさえあまり見かけず、“食べられる”は無いにしても、小鳥は少ないのだろうと、その話を信じる気になりました。ところがそれから間も無く、北京で暮らすことになって、初めての朝、何と、カッコーの声で目が覚めたのです。カッコーばかりでなく、三光鳥に似た鳴き声の鳥や、キツツキのドラミングまで聞こえるのには本当に驚きました。東京でも、明治神宮や新宿御苑などには鳥も沢山いるでしょうが、傍に人家はありませんよね。このカッコーの声は、3万人以上が暮らし、学生が自転車で往来する大学構内に建つ宿舎の部屋で聞きました。大学の構内では、大きな樹が林立し、芝生が整備されていて、リスがちょろちょろ走り廻ったり、カケスのような鳥が芝生を突付いて歩いたりと、小動物がのんびり暮らしています。旅行では、こんな所にはめったに立ち寄らないので、北京には小鳥が少ないと思うのも当然でしょう。

 確かに、街でカラスやスズメを見かけることは少ないのですが、北京には籠の鳥がいっぱいいます。退職した老人達が、鳥かごを持ち寄って、公園の樹の枝に吊り下げて、良い声で鳴かせて楽しんでいます。良い声で鳴く鳥を自慢したり、良い声の鳥のそばに籠を置いて、自分の鳥に上手な鳴き声を習わせたりします。飼われている鳥の種類は何種類かあるようですが、皆それぞれに良い声で鳴いていました。鳥かごは、丸い筒形ものです。持ち運ぶ時は、かなり厚手の布カバーを掛けて、手に提げたり、自転車のハンドルや荷台に渡した棒に二つ三つ掛けたりして運び、一度などは、北京でよく見かけるリヤカーの様な車に五つもの籠を乗せているのを見かけました。

 小鳥を飼っている方々は、愛情を込めて接しているのですが、籠を運ぶ時は、かなり乱暴に運んでいます。両手に鳥かごをぶら下げて、大手を振って歩いている老人がいたので、「どうしてそんなに振り回すのですか?中の小鳥が可哀そうでしょう?」と聞いた事がありました。するとその老人は、「こうすると、中の鳥は止まり木でバランスを取ろうと頑張るので、それが運動になって良いのだ。」と教えてくれました。

 もう一つ、意外だったのは、北京で伝書鳩を飼っている人達がかなり沢山いることです。朝夕、何気なくマンションの窓から外を眺めていると、二十羽ほどの鳥の群れが円を描いて飛んでいるのを目にします。群れが二つ三つ見えることもあります。伝書鳩の運動です。マンションの目の下に、4階建てのアパートがあって、そこの4階でも飼っているので、外に出された群れが、建物の屋根でのんびりと日向ぼっこをします。一羽が飛び立つと一斉に後を追って、飛び上がり、円を描いて何周も何周も飛び回り、気が済むとまた屋根に降り立ちます。目の前に、清朝に建てられた古い塔があるので、何羽かはその塔の屋根で羽を休めたりしています。

 この塔は、清朝王族の誰かの墓所らしいのですが、今まで残ったのが奇跡のようで、私が見るようになってからでも随分痛みが進んだようです。ハトの糞害に遭えば、被害も加速されるのではないかと心配しながら、それでものんびりと眺めています。そんな時、チョッと思い出しました。以前、北京の公園では、日本のようにハトが遊んでいるのを見たことはありませんでしたが、ここ3,4年、ハトが遊ぶ公園が目立つようになりました。これも、はとの飼育が流行ったことと何か関係があるのかも知れませんね。

 北京のスズメはどうでしょうか?街中で見かけることは本当に少ないのですが、たまに見かける時いつも感じるのは、北京のスズメは、日本のスズメより小さいと言うことです。ところが、北京の友人は、これを聞くと気を悪くします。それで、「周りの建物が大きいので小さく感じるのかしら」と逃げを打ちましたが、実際は、「やっぱり小さい」と思っています。

 皆さん、若し北京でスズメを見かけたら、是非、大きさを注意してみてください。そして、感想をお聞かせください。

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