北京雑感―32      

前門大街と後海の胡同

 

今回、いつもの北京滞在とは別に、河南省安陽の殷墟・山西省陽城の皇城相府・山西省運城の関帝廟と死海黒泥浴・陝西省韓城の司馬遷祠と文廟(孔子廟)・山西省に戻って平遥の古城と元宵節祭見学・山西省太原の晋祠と双塔寺等を回る9日間の旅を経験しました。とても楽しい、内容豊富な旅行でしたが、これについては、また何時か機会があったらお話したいと思います。

 この旅行の最初と最後に北京で泊まりましたが、私にとっては1年半ぶりの北京でした。滞在時間が短くて、ゆっくりは見られませんでしたが、以前から気になっていた前門に行って来ました。タクシーで前門西大街の大柵欄入り口まで行って、大柵欄を前門大街まで歩きました。道路は小奇麗になっていましたが、並んだお店にはあまり変化を感じませんでした。同仁堂(薬局)を基準として店の前面を揃えたようで、少しだけ道幅が広くなり綺麗になっていました。大柵欄から地下鉄の駅へ抜ける道は通りませんでしたが、覗いた限りでは、以前とあまり変わっていないようでした。何だか、物足りないような、安心したような妙な気分です。次回行った時は、是非じっくり観察してみたいと思います。

 前門大街に抜けると、町並みは完成していましたが、商売をしているところは少なくて、殆どが開店準備の内装工事中か、まだ締め切り中でした。並んだ店構えは、灰色レンガで古風に作ってあり、以前に新装なった琉璃廠と同じような感じです。王府井のように近代的な町並みでないのは救いですが、此処にどんな店が入るのでしょうか?聞く所に依ると、従来の著名な食べ物屋さんの他に、何軒か欧米のブランドショップが出店の権利を入札で得たそうです。前にも書きましたが、前門にブランドショップは似合わない気がします。皆さんはどのように思われますか?

 また、前門大街には路面電車が走っていました。レトロな電車で、一応複線になっていましたが、6時過ぎのせいか、電車は2本の線路で同じ方向に走っていました。これも伝聞ですが、この電車は前門大街を1ブロックだけ走って、前門の町並みに合わせて雰囲気を盛り上げるものだそうです。

 最初の日に泊まったのは王府井のホテルでしたが、空港から王府井までの高速道路は、一昨年よりも随分空いていました。春節直後と言う時期のせいか、世界的な不景気のせいかとも考えられますが、運転手さんは、日によって走れる車のナンバープレートが制限されているからだと考えているようでした。月曜日から金曜日まで、毎日、末尾の数字二つづつが走行を制限されるのです。土日はどうなるのか聞き漏らしましたが、北京では、車をレジャーに使うことは稀で、土日の渋滞は比較的少なかったので、制限の必要が無いのかもしれません。

 旅の最終日、北京で泊まったのは、後海近くの五つ星ホテル・竹園賓館でした。元、民国高級官僚のお屋敷で、旧鼓楼大街から小石橋胡同を西に入った所にあります。マイクロバスは胡同の両側に気ままに駐車する車の間を縫って、ぎりぎりに進んで行きました。

 前方に「竹園賓館」と書いた行灯仕立ての看板が見えてきましたが、とても五つ星のホテルがあるようには見えませんでした。入り口は、小さいけれどマイクロバスがやっと入れる程の門でしたが、門前に駐車する車があって、マイクロバスは何回か切返しても入ることが出来ず、我々は諦めて、門に頭を突っ込んだバスから降りました。門を入ると、思いがけず広い中庭があって、既に何台もの車が駐車していました。門前に駐車する車が無ければ、マイクロバスも中に入って、方向転換をして帰って行くことが出来たのですが、路上駐車の車のせいで、マイクロバスは、我々と荷物を下ろした後、向い側の小区の門内にバックで入り、方向転換して帰って行きました。

 敷地内はゆったりして緑も多く、昔の雰囲気は残っていますが、外国人観光客が好むようにかなり改築しているようです。それにしても、小さな門の中にこのようなゆったりした空間があるとは、胡同を歩いただけでは分かりません。これも「中国の懐の深さ」でしょうか。

 最近は、もっと小規模な四合院を改築して、近代的な設備を整え、1ヶ月78000元で外国人に貸し出すビジネスがあります。胡同で、門の傍らにシャッター付きのガレージがあれば、そこは党・政府高官の家か、外国人向けの貸家だと分かるそうです。

 4,5年前から、後海近辺では、昔風の灰色レンガを使用して増改築すれば、市政府から補助が受けられるようになりました。北京を発つ前に鼓楼に登って見ましたが、以前は、屋根にぺんぺん草が生え、一部崩れているような家屋が多く目に付きましたが、今回は見られませんでした。詳しく調べたわけではありませんが、かなり補修が進んだように感じました。近代的な設備を備え、四合院の雰囲気を残して生活が出来れば、北京の老百姓(一般市民)にとっても、外国人観光客にとっても良い事だろうと思いました。

 

 

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