北京雑感ー31

            住宅の新築            





 ビジネスマインドが欠如する私でも北京でやって見たいビジネスが二つありました。一つは前月お話した喫茶店経営で、これは、自身の生活体験から思いついたことでしたが、喫茶店が珍しくなくなった今日では、時期を失したと言えるでしょう。もう一つは、友人が家を建てるのを目の当りにして思ったことです。

 もう7,8年まえのことになりますが、北京の友人がマンションを購入しました。三環状線内側の落着いた地域で、しかも交通の便の良いところです。広さは180平米程あり、洗面所が2箇所あるものですが、価格は、当時の日本円に換算して、400万円程だったと思います。

 とても安いので吃驚しましたが、その場所に連れて行ってもらって、もっとビックリ。ドアを開けると、そこにはコンクリートがむき出しの、何も無い空間が広がっていました。ご存知の通り、中国では、家の購入イコール建物のスペース購入なのです。購入した人は、自分の好みに従って内装を施します。内部の壁さえも、建物の構造上必要なもの以外は取払うことが出来ます。

 購入者は、先ず設計士を選んで、図面を基に自分の希望を話しながら、設計士と一緒に部屋の配置を決め、必要な壁や間仕切り・ドア等の位置も決めます。設計士との関係はこれで終わりますが、多くの場合、設計士に依頼して、大工さん、左官屋さん、電気設備屋さん、内装屋さん等を紹介して貰います。設計士産に紹介して貰って、大工さんが電気設備屋さんや左官屋さんを連れてきても、仕事の契約は、職種毎にそれぞれの仕事人と個別に交わします。日本のように、大工の棟梁が完成まで全てに責任を負うと言うようなことはありません。仕事をする人たちの連絡が悪く、工事が頓挫して、友人があちこちに電話を掛けて調整しなければならないことも度度でした。 

 でも、本当の大変さは、こんなものではありません。中国での家作りでは、内装の材料を自分で買い集めなければならないのです。床を例に取れば、この部屋はタイル張り、あの部屋は板張り等ときめたら、販売店に行って、どんなタイルにするか、どんな板にするかを、自分自身で選ぶのです。設計士さんにお願いして、一緒に店に行って選ぶのを手伝って貰うことはできますが、主体はあくまでも施工主です。どれだけの量必要かは、設計士さんのアドバイスを受けて、少し多めに買います。余ったら、その分は返品が出来るのです。そして、この買出しは、備え付けの調理台、バスタブから、ドアノブ、シャワーや水道の蛇口、タオルハンガー等々細々とした部品まで、全部自分で選んで買わなければならないのです。私など、考えただけで疲れが出てきてしまいます。

 唯一の救いは、これら用品を買うのに、殆ど一箇所で済むことです。家を建てるとき必要なものは、「○○五金城」と呼ばれる金物市場で全部揃います。北京の建築ブームを受けて、大きな市場が市内に多数あります。(ブームが去ったら、どうなるか心配になる程のボリュームです。)日本では最近、かなり大規模なショッピングモールや、アウトレットモールが出現していますが、ちょうどそんな感じで、違うところは、一つ一つのお店が全部金物を売っている点です。全体の規模は、日本のものとは比べ物にならない位大きいものが殆どです。それぞれの店が趣を異にし、ディスプレイを工夫して商品を並べています。中には、日本の街中の金物屋さんと同様、雑然と商品を並べているお店もあったりして、ぶらぶら見て歩くには面白いのですが、必要なものを買い集めるとなると、その労力は大変なものです。

 そんな大変な思いをしてやっと完成させた家ですが、夏にクーラーを点けようとしたら、書斎のクーラーのスイッチがありません。取り付けた業者に連絡をして来て貰い調べると、壁面に取り付けなければならないスイッチが、取り付けられないまま、壁の裏側に放置されていました。又別の日、クーラーを長い間点けていたら、天井から水が漏れて来ました。これも調べて貰うと、クーラーから出た水を流す排水管の傾斜が少なくて、溜まった水が溢れ出たためと分かりました。

 こんな時、工事をした人達は、次の仕事をした人に責任を負わせようとします。施工主である友人は、彼らを前に「全員の責任で、使えるようにやり直せ」と強く言って、修理させました。

 そんなテンヤワンヤを見ていて、施工主の負担を少なくし、工事をきちんと完成させるためには、施工主から全部任されて、工事全般を取り仕切る役割が必要だと思いました。建築コーディネーターと言うような仕事を始めたら、需要が多いのではないかと思います。

 因みに、昨年、友人のマンションの最上階、いわゆるペントハウスがなかなか売れないので、不動産会社が内装を施して、完成品として売りに出すことにしました。これからは、日本と同じような販売方法が多くなるかも知れませんね。私のビジネスチャンスはまた無くなります。

 
inserted by FC2 system