北京雑感―14 北京の自動車産業

 

 「北京の自動車産業」と言っても、生産者側の話ではありません。自動車購買者側の話です。
中国人の友人が、
2005年末に自動車を買いました。そのときの状況が、日本とはかけ離れていたので、ちょっと紹介してみようと思います。
もっとも、中国の社会情勢の変化はとても早いので、今は少し違うかも知れませんが。

 新聞報道によると、中国の自動車保有台数は、アメリカに次いで世界第二位になったようですが、このことは、半年毎に北京に来る私のような人間には、目に映る景色として十分納得できる情報です。
6年ほど前には、多くの自転車が車道を走り、自動車は僅かな公用車・社有車だけでした。
それが、年を追う毎に自家用車が増え、それに連れて自転車が少なくなって来ました。
現在では、片側
5車線も6車線もある広い幹線道路が車で埋め尽くされ、しばしば交通渋滞を引き起こしています。
日本の狭い道路ならいざ知らず、こんな広い道路でどうして渋滞が起こるのだろうと不思議ですが、これは、自動車の数が増えたばかりでなく、交通ルールや運転手のマナーにも原因があるようです。

 しかし、それはさておき、自動車台数の増加は本当に目覚しく、北京のこんな様子が、上海や深?・広州でも見られるとしたら、世界第二の自動車保有国というのも、実感出来ます。
そのことを一番強く感じるのは、住宅の周りに駐車する自動車の数の増加です。
4年前までは、清華大学校地内の住宅周辺に駐車する自動車は殆どありませんでした。
それが
3年前になると、ちょっとした空き地には必ず3,4台の車がおかれ、「北京にも車が増えてきたなァ」と感じましたが、昨年は、とうとう、住宅の周りに白線で仕切った、公認の駐車場が出来て、びっしり車が並んでいました。
大学構内の住人の駐車は無料ですが、場所が決められていないので、住まいの近くは早い者勝ちだそうです。

 紫竹院近くの、私が暮らすマンションは、地下に大きな駐車場を備えているのですが、料金が高いので入庫する人は少なく、外周道路に駐車するので、周りはいつもごった返していました。
去年行ってみると、マンション敷地内の遊歩道に車が駐車して、車の横を人間が通行したり、散歩したり、小さい子供が遊んだりしていました。
マンション管理会社が、住民の車を、地下駐車場よりもずっと安い料金で駐車出来るようにしたためですが、全住民の同意を取り付けていないので、この措置に反対する人々も大勢います。
実際、以前はゆったりしていた中庭の通路にまで車が並んでいて、雰囲気がすっかり悪くなりました。 
中国では、分譲マンションも土地は
70年の借地権だけなので、中庭や通路などの共同使用部分が、日本の使用権分譲とは違うのかも知れません。
「ある時、住民に何の断りも無く中庭に車が駐車するようになった」と、車を持たない人は勿論、車所有者の一部も、管理会社のこの措置には反対をしていますが、一旦許可された駐車は、なかなか取り消しが出来ないようです。

 市の中心部では、自転車が通る路側帯の片側や、甚だしい時には、歩道にも駐車スペースを作って有料駐車場としています。
この様な駐車場は、出し入れに不便なだけでなく、歩行者を危険に晒します。 
北京の人々は、自家用車所有の便利さを享受すると同時に、それに伴う不便さにも直面し始めています。

 それでも、人々は自動車を買い、通勤に、ビジネスにと活用しています。
北京では、まだ行楽に車を利用することは少ないようで、土曜・日曜は、ウィークデイに比べて、車の交通量は若干少ないようです。でも、最近は小型車が売れるようになったとのことですから、いずれ、若い人達が自家用車を行楽に使用するようになることでしょう。

 北京では、自動車の販売方法が、日本とは大分違います。
街中にあるメーカーのショウルームにこそピカピカに磨き上げた新車が展示されていますが、郊外の販売店が集中している場所では、表側にメーカーのショウルームがあり、室内に
2,3台のモデルを展示していますが、外には、舗装もしていない地面に砂埃を被った新車がいっぱい並べてあり、周りに個人経営の販売店があって、ショールームから出てきた客に声を掛けて、机と椅子だけの事務所に連れて行き、メーカー価格よりもぐっと安い価格を提示して客の購買意欲を掻き立てます。
どんな車種も扱っていて、自分が持ち合わせていない車種を見たいというと、電話で仲間に連絡を取り、そこまで案内して内部を見せます。仲間も持ち合わせていない車種の時は、そのあたりに停めてある該当車を探して、外側だけを見せたりもします。
この場所は、メーカーの共有モータープールで、ブローカーが、周りで事務所を構え、ディーラーとして機能しているようです。

 こんな場所を何箇所か見て周り、友人は新車を購入しました。彼女が、どのようにして新車を手に入れたか、どんな車が来たかは、次回お話しましょう。 

  

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