北京雑感ー3 北京の交通事情       
 

 10年程前まで、北京は「自転車王国」と言われていました。
大通りいっぱいに広がって走っている写真に、「北京の通勤風景」なんてキャプションが付いていたのを見たことがあります。
私が初めて北京へ行ったのは、8年前ですが、その頃もまだ、朝夕の通勤時間帯には道幅の半分を自転車が占領して、バスやタクシーは遠慮がちに走っていました。
しかし、それ以後毎年行く度に自転車は少なくなり、その分自動車が増えて来て、最近では、車の方が断然多くなりました。
現在北京の自動車は、1日1000台のペースで増加しているそうです。

 北京の道路は広くて快適です。環状道路は2号から5号まで既に完成していて、所々で環状6号線も既に着工しているようです。道路は広くて、ゆったりしており、東京付近との最大の違いは、走行していて圧迫感がないことです。勿論「防音壁」なんて言う無粋なものはありません。こんな快適な道路で渋滞など起こらないだろうと思うのですが、実際は、しばしば渋滞が起こっているのです。

 渋滞の原因は大きく分けて3つあると思われます。
第一は、運転者のマナーが問題です。中国のドライバーは、強気な人が多いようで、譲ると言うことをあまりしません。ちょっと譲り合えばスムーズに走行できると思うのに、頑として譲りません。
バスの上から見ていても、バスが停留所に近づいて右に寄ろうとする(中国は右側通行です)のですが、右側を並走している車はバスを先に行かせません。前方にはバス停があるのですから、前のバスが支えていると思うのですが、バス停に着く頃には前のバスがいなくなると思うのか、バスの運転手が諦めて速度を落とすのを期待しているのか、譲りません。
バスはバスで、右の車を先に行かせると、その車のすぐ後の車が同じように入ってくるので、譲った甲斐が無くなります。双方我慢比べをすることになります。
北京では、車の運転には、技能ばかりでなく、忍耐力と気の強さを併せ持たなければなりません。

 交差点で、前方の最後尾が交差点にかかっていれば、黄信号、時には青信号でも手前で止まりますよね、ところが北京では、どんどん交差点内に入ってきます。
交差する方の信号が青になっても、交差点内の車が邪魔になって進めません、左折する車があったりすると、渋滞に輪がかかります。
ある時、バス停の傍の交差点でこの渋滞が起き、私の乗りたいバスが交差点の向こうに見えるのですが、前を横切る車のせいで信号が4回変わるまで乗れませんでした。腹立たしいのを通り越して、唯、唯、あきれて見ていました。

 こう書くと、自家用車のドライバーの運転マナーだけが渋滞の原因のように思われがちですが、バス自身も渋滞の原因を作っています。
ご存知のように、北京のバス路線は沢山ありますが、運行予定表がありません。これは未確認情報ですが、バスの運転手と車掌さんは、給料の他に切符の売り上げ(乗客数)によって歩合賃金がもらえるのだと聞きました。
そのせいかどうか、やたらに急ぐバスがあります。停留所で停まる時も、無理やり、斜めに頭を突っ込んだ状態で停まって、他の車の通行を妨げたりすることが間々あります。

  第2の大きな原因は、歩行者も含めた交通ルール、信号の不備です。
北京では、前方の信号が青の時は、いつでも右折できます。道路の状況によっては、前方が赤でも右折はOKです。歩行者が、前方青になったので横断歩道を渡ろうとするのですが、絶えず右折車が来るのでなかなか渡れません。
右折車の途切れた隙に渡り始めると、信号はもう赤に変わってしまいます。
歩行者は今まで随分待っていたので、これ以上は待てません。赤でも渡ってしまおうとします。歩行者がかなりの数になると、車は青信号でも進めません、車が停まると、歩行者が更に、次から次へと渡って、信号が信号の働きをしなくなります。
車やバスからこの光景を見た時は、「北京の歩行者は、行儀が悪い。」と憤慨しましたが、自分が歩行者となって見ると、信号を無視して渡る歩行者の気持ちもわかってきます。
ああでもしないと、現行の信号システムでは、歩行者がうまく渡れません。
右折車に対して、歩行者優先を徹底すべきです。或は、歩行者信号が赤になってから右折を許可すべきでしょう。
歩行者も次の信号で必ず渡れると分かれば、無理をせず次の信号を待つでしょう。
交差点の信号システムをちょっと手直しするだけで、渋滞のタネが随分減ると思います。

 もう一つの原因は、地下鉄工事です。
私の行動範囲内では、現在、中関村南大街の海淀黄庄付近が工事で渋滞しています。工事がなくても、中関村から人民大学の間は、良く渋滞するところですが、今は慢性的な渋滞が起こっています。
地下鉄が完成すれば便利になって、地上の車の通行も少しは減るかも知れません。
これは、完成まで、ひたすら待つしかないのでしょう。
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