大連だより・日本語教師雑記 E

中国での春節を味わう

 

 学校が冬休みのため約5か月振りに1月12日、日本に帰国した。冬休みは1月11日から2月29日までであったので、半分は日本で過ごし、残りを中国で過ごした。仕事に戻る前に出来れば北京、平遥、紹興などを訪ねてみたいと考えた。

  帰国してから日本には約1ヶ月いたが、その間は毎日何かと忙しく、報告会やら友人と会うやら、また日本語の教材や中国人先生の同僚へのお土産を買いに出かけたりするなど、かなり多忙な日々であった。ゆっくり休むなどという余裕はなかった。しかし、多忙な中にも精神的にほっとする時間を多く持つことが出来、再び中国に戻って仕事が続けられそうだと気持ちの上でゆとりを得て、1ヶ月後日本を後にした。

  中国には2月10日に戻ったが、大連に戻る前に少し旅行したいと思い、まず東京から直接北京へ行った。それから以前から訪ねてみたいと思っていた山西省の平遥(民清時代の街並みがそのまま残り、1997年ユネスコの世界遺産に登録)、浙江省の寧波、紹興そして最後に上海を訪れることにした。今年の春節は2月7日から12日まで、この間は大勢の人々が動くので移動が何かと大変だと聞いていたが、それほどでもなさそうであった。

  北京では侶松園賓館に泊まった。このホテルは四合院と言われる伝統的な昔からの建物を模したホテルで、大きくはないが、北京の古い街並みの中にあり、胡同を見て回るのにはぴったりのロケーションである。最近何かと雑誌などで紹介されている「南鑼鼓巷」という通りの近くにある。北京ではここに5泊したが、何度もこの通りを散策した。

  この時期春節のため毎晩のように花火が打ち上げられ、ホテルの近くではあちこちで爆竹の鳴る音もした。爆竹の音はかなりうるさいが、私にとっては珍しいので、歩いている時にその音がすると何度もその近くに行って、しばらく見ていたりすることが多かった。春節のもうひとつの特徴は、家々の門口に「春聯」というおめでたいことばが掲げられていることである。

 対句となったことばが赤や金で彩られた華やかな縦長の紙に書かれてドアの左右に貼り付けられている。また、ドアの上の鴨居には「福」と書かれた四方形の紙が、「福」の文字を逆にして貼り付けられている。どの家でも見られる光景である。以前4月ごろ北京を訪れたことがあるが、その時もまだこのような飾りがどこの家でも貼られたままで、しかも破れそうになっていたが、これは自然に無くなるまで、張っておくものなのだろうか。そのような習慣でもあるのだろうか。

  北京滞在3日目に天気がよかったので、「地壇公園春節文化廟会」という廟会にでかけた。これはこの時期あちこちで開かれている春節の祭り(日本の縁日とでもいうか)であるが、地壇公園で開かれているのが一番大きいらしい。地下鉄「安定門駅」で下車すると、多くの人々が皆同じ方向に向かっているので、すぐ分かる。人々の後について行けば地壇公園の入り口まではあっという間であった。公園前の横断歩道の上から見ると、人、人、人で、一体どこからこんなに人が湧き出てきたのかと思うほどの人込みである。公園入り口には何百という赤い提灯が飾られ、華やかな雰囲気を演出している。入場券10元を払って中に入った。

 中に入ると、とにかく何でもある。食べ物の屋台から正月の飾りを売る店、おもちゃ屋、美術品(本物かなあ?)を売る店、子供向けのぬいぐるみ屋、射的屋、民族

舞踊のステージ、カラオケ屋、蛇女の見せ物小屋、今年の干支のネズミのグッズを売る店等々何でもある。普段見られないものがたくさん売られている。中国風風車(かざぐるま)とでも言うような、カラフルな色に塗られたものが何十となく屋台の上に取り付けられて売られている。風に吹かれてカラカラ音を立てていた。

 小さな台の上で草を使ってこおろぎ、バッタ、蝶などを作っている人もいる。多分農村から来た人かも知れない。また、伝統的な年画を売る屋台もある。この人も農村から来たのだろう。あちこちで多くの人が正月用の飾りといったものを買い求め、それらを大事そうにして持ち帰るのを見た。

 一番興味があったのは食べ物の屋台である。北京名物もたくさん売られていたが、何と言っても目を引いたのはモンゴル風のシシカバブだろう。食べ物の屋台の中でかなりの店がこのシシカバブを売っていた。どの店も1本10元。かなり高いかと思って何軒か回っていると、もっと安い店があった。試しに買ってみたが、まあまあの味であった。焼きイカ、焼きトリ、茹でたとうもろこし、北京名物の練り菓子、米線(米で作った麺)、さんざしの糖葫芦(飴菓子)などが目に付いた。驚いたのは「アラビアのシシカバブ」という名前の出ている屋台であった。中東出身の人らしい男の人が何人も白い独特の服装をして店先でシシカバブを焼き、販売していた。珍しいせいか、かなり多くの人々が店先に群がっていた。

 園内を回っていると、結構時間を忘れて楽しむことが出来た。しかし、かなり疲れてしまった。数時間歩き回ると、かなり広い園内はどこがどうだか方向が分からなくなってしまう。かなり疲れたので帰りたいと思ったが、出口が分からず、うろうろして結局出るまで20、30分もかかってしまった。しかし、とにかくこの日は北京の人々の春節の楽しみを共有出来たような気がして、楽しくホテルに戻った。一日中ほのぼのとした気持ちでいることが出来た

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